お香を作るつもりなんてなかったのですが。線香「大蔵香」ができるまでの話
お香を作るつもりなんてなかったのですが。
お店に来ていただいたことのある方はご存じかもしれませんが、3年ほど前から、私のお店ではお香を焚いています。
もともと私は、アロマやお香、香水など、香りを楽しむことが好きでした。昔から匂いには興味があり、どちらかというと敏感な方だと思います。
ここ数年は、奥州平泉の中尊寺のお香を使っています。
東京に行ったときには、銀座香十さんの名刺香をお土産に買ってくることもあります。気に入ってくださる方には、施術の後に無料でお渡しすることもありました。
そんな私ですが、自分でお香を作ろうと思ったことは一度もありませんでした。
お香は、専門の職人さんが作るもので、自分で作れるものだとは思っていなかったからです。
ところが、あることがきっかけで、作ってみることになりました。
「まっこの木」って知ってる?
お盆前のある日、祖母と話をしていました。
庭のネムノキの花がきれいに咲いていたので、
「今年はまっこの木の花がすごいな、見事だな」
と祖母が言いました。
「昔から、まっこの木、まっこの木って呼んでな。確か…ネムっていうんだ。ネムノキな。昔は抹香にして、線香みたいにして使ったんだ。だから、まっこのき、まっこのきっていうなしゃ」
という話を聞きました。
「へえ、そうなんだ」
そのときは、それくらいでした。
ただ、しばらくしてから、
『乾燥させて粉にしたら、本当にお香みたいにできるのかな?』
とぼんやり思ったんです。
ちょうどネムノキも大きくなってきていて、切りたいところがあるという話もあったので、それなら試してみようと思いました。
木を切って、葉を乾燥させて、葉柄などを取り除いて、臼で擦り潰してみました。
そして、粉になったものの匂いを嗅いでみました。
すると、独特の香りがフワッと薫りました。
素朴で、
でも、確かにお線香らしい香り。
そして、なぜか懐かしい。
「ああ、これは確かに香なんだ」
と、すぐに好きになりました。
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昔の人も、この香りを嗅いでいたのかな
その香りを嗅いでいると、
「昔の人は、こういう香りをお墓参りや家のお線香として使っていたのかな」
なんて、昔の人の暮らしに思いを馳せてしまいます。
高級な香木のような、華やかで高価な香りでは全然なくって、
白檀とかのような、いわゆる「高級なお香」という感じでもありません。
もっと素朴で、田舎っぽい。
でも、風情がある。
私の中では、昔の日本の家の仏壇から漂ってくるようなイメージの香りです。
実際に線香にして焚いてみると、部屋や廊下にも香りが広がりました。
炊くまでは正直なところ
「焦げ臭かったらどうしよう」
「たいして香らなかったらどうしよう」
正直、そんな疑いも少しありました。
ところが、嫌な感じはまったくありませんでした。
「これは本当に、まっこのきからできた香りなんだ」
そう思いました。
それが、なんとも新鮮だったんです。
ちなみに、ネムノキを切っているときには、はしごに登って作業をしていたら、目の前に20cmくらいの蛇が出てきて、ばっちりと目が合って笑
驚いてはしごから「うわあっ」と飛び降りました笑
今となっては、それもこのお香を作ったときの思い出の一つです。
もしかしたら、蛇も応援しに来てくれたのかもしれません。
そこにラベンダーを混ぜてみました
もう一つ、私のお店にはたくさんのラベンダーがあります。
ラベンダーは毎年剪定する必要があるので、かなりの量の花が取れます。
私はそれをドライフラワーにして、タンスに入れたり、玄関やトイレに置いたり、香り袋にしたりして使っています。
お客様にも、ラベンダーの香り袋として無料でお渡ししています。
お風呂に入れても使えます。
私自身はとても重宝しているのですが、たくさんあるので、
「これ、ほかに何か使い道はないかな」とも思っていました。
そんな話を父としていたときです。
「これも線香に混ぜたらいいんじゃないの?」
と言われました。
「えっ、そんなことできるの?」
というところから始まりました。
そういえば、ラベンダーを使ったお香もあったような気がする…
よし、やってみるか。
ドライフラワーにしていたラベンダーを臼で擦り潰して、ネムノキと同じように粉にしました。
そして試しに混ぜて、線香にしてみました。
すると、これが思った以上に良かったんです。
ネムノキとラベンダーは、喧嘩しませんでした
ラベンダーの香りがアクセントになって、ネムノキが香りの土台になる。
そんな感じの香りでした。
ラベンダーなのに、少しミントのような清涼感があって、鼻をすっと抜けていく。
実は私は、ラベンダーよりローズマリーの香りの方が好きだったんです。
だから、自分のお店の花壇で育てたラベンダーを粉にしてみて、
「ラベンダーって、こんなに良い香りがするんだ」とラベンダーに対する認識を改めました。
市販のラベンダー製品には、どこか薬臭い香りを感じることがあって。
でも、自分の店で育てたラベンダーを、今年採って、乾燥させて、粉にしてみる。
そうすると、全然違ったんです。
「これが本物のラベンダーの香りなんだな」
そう感じました。
家族にも焚いてもらったところ、大変好評でした。
「ちゃんと線香だ。へぇーこんなものが作れるんだ」
と、家族みんなで驚きました。
「大蔵香」という名前
一応名前があった方が呼びやすいと思い名前を考えますた。いろいろな呼び名を考えてみたのですが
ただ、このお香ができた経緯や、ネムノキの香りを実際に嗅いだときのことを考えると、最終的に一番しっくりきたのが「大蔵香(だいぞうこう)」でした。
「大蔵」というのは、私の家で昔から受け継がれてきた名前です。
私の実家のある横手市猪岡の部落で、「大蔵の松井」と昔から呼ばれていたようで、そこにちなんで、この名前を付けました。
難しい意味を持たせたかったわけではありません。
私としては、ただ「松井さん家のお香」くらいの感覚です。
自分の家にあるネムノキから作ったお線香なので松井香よりはよっぽどマシですよね笑
そう考えると、「大蔵香」という名前が一番しっくりきました。
横手では「よこてっこ=横手の子、人」「あまえっこ=甘酒」など最後に〇〇っことつけますよね。「大蔵香=だいぞっこ」みたいに慣れ親しんで貰えればと思います。
作ってみると、意外と大変
最初は注射器のようなもので、お香を押し出して作っていました。
ところが、これが思った以上に硬くて。
指圧やマッサージをしている私の指でも、かなり力が必要で、親指が痛くなりました(笑)
今は改善して、指にやさしく作れるようになりました。
粘土を細く押し出しているような感じで、小学校の図工の工作を思い出します。
普段の仕事とはまったく違う作業なので、まだ慣れていません。
細かい作業もありますし、正直、大変だなと思うところもあります。
でも、少しずつ形になってくると、
「せっかく作るなら、良いものを作りたい」
という気持ちが出てきます。
小学校の頃は図工が好きで、結構得意でした。
昔好きだったことが、こんなところでも役に立つんだなと思いました。
大蔵香の使い方
私は、寝る前に大蔵香を焚いて、
「今日も一日おつかれさま」
と、一日を終える時間に使ってもらえたらいいなと思っています。
「良い睡眠を取ろう」
「今夜は良い夢を見られたらいいな」
そんな気持ちで、眠る前のひとときに香りを楽しんでもらえたら嬉しいです。
また、大切なご先祖様への感謝として、お供えするお香として使っていただくのもいいと思っています。
昔ながらの素朴な、少し野暮ったさのあるお線香。
そんな香りをたまにお供えしたら、
「こんな香り、昔にもあったな」と、ご先祖様も懐かしく思ってくれるんじゃないかな。
そんなことを勝手に想像しています。
もちろん、煙や香りが苦手な方もいます。
ですので、無理におすすめしたいわけではありません。
お線香が好きな方に
香りを楽しむのが好きな方。
一日の終わりに、少し気分転換をしたい方。
そんな方に使っていただけたらと思っています。
お店で香りをお試しください
大蔵香は、杉沢はりきゅう院でも実際に焚いています。
「どんな香りなんだろう?」
って思いますよね。そんな方は、お店で実際に香りを感じてみてください。
興味がある方は、往診時間は不在ですのでLINEでお香の香りだけでもお試しください。
もしくは車がある時はおりますのでふらっとお立ち寄りいただいても大丈夫です。
香りは文章だけでは、なかなか伝わりません。
気に入っていただけたら、そのときに使っていただければ十分だと思っています。
まだ差し上げる用意が出来ていないですが、いまお線香の箱を作ってもらっているので、年内には商品として完成予定です。
ちなみにいま作っているのは、
大蔵香 眠
ネムノキと美郷町のラベンダーを合わせたお香。
大蔵香 原
ネムノキそのものの香りを楽しむお香です。
秋田にも、こんな香りがあります
調べてみると、ネムノキは秋田では「マッコノキ」と呼ばれ、昔は葉を乾燥させて抹香にしていたという話が残っています。
私自身も、祖母から「昔はまっこの木を抹香にして使った」と聞いたことが、今回作ってみるきっかけになりました。
昔から私のすごく身近にあった木、毎年咲いていたラベンダー、祖母や父との何気ない会話。
そこから始まって、実際に自分で粉にして、練って、押し出して、乾かして、線香にしてみて、焚いてみた。
そうしてみたら、思っていた以上に良い香りでした。
秋田には、こんな香りもあるんだよ。
そんなことを、香りを通して知ってもらえたら嬉しいです。
大げさなものではありません。
私にとっては、田舎の香りです。
そして、自分で作ったお香を毎日焚けるというのは、やっぱりちょっと嬉しいものです。
そんなところから始まったのが、大蔵香です。
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