杉沢はりきゅう院ブログ

東洋医学で大切にされる「精(せい)」とは |命の根源的エネルギー「精」

精とはなんですか?

生命の土台を支えるエネルギー

氣が満ちている、元気です

私たちの身体は、目に見えない力によって守られ、動いています。
東洋医学ではその力を・水・精(せい)の4つに分けて考えます。中でも「精(せい)」は、命の源とも言える、最も深く貴重なエネルギーです。

今回は、この「精(せい)」について、できるだけわかりやすく説明していきます。

精とは何か?

先天の精赤ちゃん

「精(せい)」は、身体をつくる材料であり、生命活動の土台となるものです。

例えば…

成長・発育

生殖(赤ちゃんをつくる力)

骨や歯の健康

老化の進み方

思考や集中力

こうしたものに深く関わっています。

「精」はただの栄養ではなく、“生命の根源”のような存在であり、「体力・回復力・免疫力・生殖力」を司る、特別なエネルギーです。

精には3つの種類がある

先天の精(せんてんのせい)

両親から授かった、生まれつきの精

腎(じん)に貯蔵され、体質や寿命の土台となります。

これは増やすことができず、「消耗しないように生きる」ことが重要です。

例:生まれつき体が丈夫な人、体格の良い子どもなどは先天の精が充実していると考えられます。

後天の精(こうてんのせい)

生まれた後に、飲食物や空気から得られる精のこと。

胃腸(脾胃)の働きで食物を消化吸収し、「気・血・水」とともに「精」が作られます。

生活習慣や食事によって補えるのが特徴です。

よく食べ、よく眠り、よく笑う。これが後天の精を養う基本です。

腎精(じんせい)

「腎(じん)」に貯蔵されている「精」のこと。

実際には「先天の精」と「後天の精」が合わさってできるものとされ、命のエネルギーの蓄えのような役割を持ちます。

成長、ホルモン分泌、生殖能力、老化の進行に関わります。

いわば「命の貯金箱」に入った精。それが腎精です。

精が不足するとどうなる?

ぜえぜえ疲労感

精が足りなくなると、体の深い部分に不調があらわれます。以下は東洋医学的に見る「精虚(せいきょ)」のサインです。

症状や状態 東洋医学的な解釈
疲れやすい・だるい 生命力の低下
髪が抜けやすい・白髪が増える 腎精不足による髪の栄養不足
耳が遠くなる・耳鳴り 腎と耳は密接に関係
不妊や性機能の低下 生殖を司る精の不足
成長が遅い(子ども) 腎精の不足による発育不良
骨がもろくなる・腰痛 骨と腎精の関係
記憶力・集中力の低下 脳も腎精によって養われている

‍特に加齢による「腎虚(じんきょ)=精の不足、減少」は、認知機能排尿障害聴力の衰えといった形でも現れます。

ゆらぎやすい女性のカラダを内側から整える

女性のからだは、一生のうちに何度も変化の波を迎えます。

思春期・月経・妊娠・出産・更年期…。

そのどれもが「ホルモンバランス」だけでなく、東洋医学でいう「精(せい)」の働きと深く関係しています。

精は“女性らしさ”を支えるエネルギー

東洋医学では、女性の健康や美しさ、心の安定はすべて「精」の豊かさにかかっていると考えられています。

・生理が順調かどうか

・妊娠しやすい体かどうか

・産後にしっかり回復できるか

・更年期を穏やかに過ごせるか

・髪・肌・骨が健康かどうか

・心が安定しているか

これらはすべて「精」の量と質に左右されるのです。

女性の「精」は特に腎(じん)と密接

ラッキー7

東洋医学では「女性は7の倍数で変化する」とされ、腎と精がその変化の軸にあります。

年齢 起こる変化(東洋医学より) 精との関係
7歳 永久歯が生え、髪が伸びる 腎気(じんき)が生じ始める
14歳 月経が始まる 精が満ち、生殖力が備わる
21歳 成熟 精・血ともに充実
35歳 肌のつやが衰える 精の衰え始め
49歳 閉経 腎精の減少による変化

このように、腎と精は女性の一生を左右する軸なのです。

女性にあらわれやすい「精」の不足サイン

症状 東洋医学的な意味
生理不順・無月経 精や血が不足している可能性
不妊 腎精・腎気の不足による
肌の乾燥・しわ 精が足りず、潤いが減少
白髪・脱毛 腎精の消耗による
骨粗しょう症 腎精と骨の関係から
情緒不安定・うつ 精が足りないと心も不安定に
更年期の不調 腎精の衰えにより体温調節や感情が乱れやすい

女性が「精」を養うためにできること

女性は日々の生活のなかで、自分の「精」を育て、守ることができます。

「腎を補う食材」を積極的に

黒ごま、黒豆、山芋、くるみ、なつめ、貝類、卵、うなぎなど。
・特に黒い食材は腎を補うとされ、「補腎(ほじん)」に最適。

冷えを防ぎ、下腹を温める

・腎は「冷え」に弱く、精の働きも落ちやすくなります。
・腹巻や足湯、温灸などで「腎を温める」習慣を。

早寝を心がける

・腎と精は夜に養われます。
・夜10時〜深夜2時は「腎のゴールデンタイム」と言われます。

感情の起伏をゆるやかに

・ストレスや怒りは肝を傷つけ、精を消耗させます。
・音楽、呼吸法、ハーブティーなど、自分に合った癒しを。

月経や産後のケアを丁寧に

・生理や出産は「血と精」を消耗します。
・「休むこと」が最大の回復になります。

セックスや過度な排精に注意

・精は生殖に使われます。過度な消耗は腎精の枯渇を招くとされます。

精を養うことは「美しさ」と「年齢に抗わない強さ」を育てること

・肌の潤い

・髪のつや

・感情の安定

・骨や関節のしなやかさ

・生理や更年期のバランス

これらすべては、「精」という土台が支えています。

忙しい日々のなかで、ほんの少し立ち止まり、

からだの深くにある“精”をいたわる時間を持ってみませんか?

なんとなくの不調の原因は“精”かもしれません

肩こり

年齢のせいかな。

忙しいから仕方ないよ。

ホルモンのせいかも…。

そうやって見過ごしている「なんとなくの不調」

実はそれ、「精(せい)」がすこしずつ消耗しているサインかもしれません。

髪や肌の変化、生理や妊娠・出産のゆらぎ、
なんだか疲れが取れない、眠りが浅い、ちょっとした言葉に心がざわつく。
そんな時こそ、自分の“内なるエネルギー”に目を向けてみてください。

「精」は、女性の一生を静かに支えている“命の貯金”です。
増やすには時間がかかるけれど、守ることは、今日からでも始められます。

早く寝る。温かいものを食べる。深く呼吸する。
ただそれだけで、からだは少しずつ整い始めます。

あなたの不調は、“我慢するもの”ではなく、
「立ち止まってほしい」という体からのメッセージです。

もっと軽やかに、もっとしなやかに、
自分のペースで年を重ねていくために

「精」をいたわる暮らし、今日からはじめてみませんか?