自分のためだけじゃない食事。腸内細菌にもご飯を届けるという考え方

普段から、ほぼ毎日甘酒を飲んでいます。

もう半年ほど続いている習慣です。

もともとは塩麹をよく使っていたのですが、米麹を使って甘酒を作るようになりました。

作り方は、米・米麹・水を1:1:2の割合で混ぜ、55〜60℃程度で炊飯器の保温で8〜11時間、濡れた付近で蓋をしてたまにかき混ぜます。

夕食のご飯の残りを利用して朝にはできている感じです。保温して糖化させる方法です。アルコールは含まない、米麹から作る甘酒です。

米麹はいろいろなお店のものを使っています。私が特に好きなのは、横手市平鹿の新山食品加工場の米麹です。こちらの味噌や塩麹もおいしいんですよね。

新山食品加工場の紹介ページはこちらです。

新山食品加工場|よこて発酵文化研究所

ほかにも大仙市や横手市平鹿の植田羽場の麹、横手市本町の麹など、地元の麹をいろいろ試して飲んでいます。

そんな甘酒を作っているうちに、ふと疑問が出てきました。

完成した甘酒を少し残しておいて、新しく炊いたご飯に混ぜたら、また甘酒が作れるのだろうか。

毎回新しい米麹を使わなくても、麹の働きを次につなげられないだろうか。

調べてみると、完成した甘酒に糖化酵素が残っていれば、次のご飯のでんぷんを糖に変える可能性はあります。ただし、それは麹菌そのものを増やしているのではなく、麹菌が作った酵素の働きを利用しているということです。

麹菌そのものを次の世代につなぐには、蒸した米に種麹を付けて、改めて米麹を作る工程が必要になります。

そんなことを考えているうちに、今度は麹菌と腸内細菌の関係が気になりました。

麹菌は生きたまま腸に届かなくてもいい?

麹菌はカビの仲間です。

米麹を作るときには、麹菌が米の中で繁殖し、さまざまな酵素を作ります。その酵素が米のでんぷんやたんぱく質に働きかけ、甘酒や味噌などの発酵食品を作る手助けをしてくれます。

では、その麹菌を食べたらどうなるのでしょうか。

胃の中には胃酸があり、食べた菌がすべて生きたまま腸まで届くわけではありません。

しかし、麹菌が生きて腸に届かなければ意味がない、というわけでもないようです。

麹菌が作った酵素や、麹菌の働きによって変化した食品の成分は、菌そのものが生きているかどうかとは別に、食事の一部として身体に入ります。

発酵食品の面白いところは、菌を食べるということだけではなく、菌が食材に働きかけた結果も一緒にいただいているところなのかもしれません。

実際に、米麹甘酒を人が飲んだときの排便や腸内細菌の変化を調べた研究もあります。

2021年に発表された研究では、健康な成人を対象に、米麹甘酒を飲むグループと比較飲料を飲むグループに分け、4週間にわたって調べています。

その結果、米麹甘酒を飲んだグループでは、排便日数や排便回数に改善が見られました。一方で、便中の短鎖脂肪酸濃度には、グループ間で有意な差は確認されませんでした。

つまり、甘酒を飲むことで排便に変化が見られた研究はありますが、その理由や腸内細菌との詳しい関係については、まだ十分に分かっていない部分もあります。

甘酒を飲めば必ず腸内環境が改善する、という話ではありませんが、麹菌そのものだけでなく、麹菌が作り出した成分にも目を向ける必要がありそうです。

サツマイモを食べるのも、腸内細菌のため?

実は最近、サツマイモをよく食べています。

秋ということもありますし、もともと子供がおやつに食べていたものを私もいただいていました。

最近はドラッグストアやスーパー、コンビニでも焼き芋を見かけますね。

ただ、最近の焼き芋は本当に甘いものが多いと思います。

もちろん、おいしいです。

でも、私が子供の頃に食べていたサツマイモは、もっと素朴で、少しぼそぼそしていて、自然な甘さがありました。

干し芋も同じです。

最近よく見かけるものは、しっとり柔らかく、とても甘いものが多いですが、昔食べていたような、表面に白い粉が付いていて、ビーフジャーキーのように硬い干し芋も懐かしくなります。

甘いものが悪いという話ではありません。

ただ、毎日食べるのであれば、私には昔ながらの少し野暮ったいサツマイモの方が合っている気がします。

そんなこともあって、今回は鹿児島県産の紅はるかを購入しました。

出品者の説明では、栽培期間中は農薬・化学肥料を使用せずに育てたものとのことでした。

食べてみると、どこか懐かしい感じがしました。

今はそれを楽しんでいます。

サツマイモは品種や栽培方法、貯蔵期間、加熱方法によって甘さや食感が変わります。紅はるかも、貯蔵や加熱によって甘みが強くなる品種です。

今回は、そうした甘さだけではなく、昔食べていたような素朴な食感を求めて選びました。

人間だけでなく、腸内細菌にも食事を届ける

ここで、もう一つ考えたことがあります。

私たちは食事をするとき、自分の身体に必要な栄養を摂ることを考えます。

たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなどですね。

でも、私たちのお腹の中には、たくさんの腸内細菌が暮らしています。

その腸内細菌たちも、食べ物を必要としています。

例えば、サツマイモには食物繊維や難消化性でんぷんが含まれています。

これらは人間の消化酵素だけでは十分に分解されず、大腸まで届き、腸内細菌に利用されることがあります。

腸内細菌は、こうした成分を発酵させ、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸を作ります。

特に酪酸は、大腸の上皮細胞がエネルギー源として利用することが知られています。また、腸管のバリア機能や免疫の調整にも関係しています。

つまり、食べ物は自分の身体のためだけに食べているわけではない、とも考えられます。

自分が消化して利用するものもあれば、腸内細菌に利用してもらうものもある。

そう考えると、普段の食事の見方が少し変わってきます。

サツマイモだけでなく、ゴボウ、玉ねぎ、大豆、大麦、海藻などにも、腸内細菌が利用できる食物繊維やオリゴ糖が含まれています。

例えば、ゴボウに含まれるイヌリン、玉ねぎに含まれるフラクトオリゴ糖、大麦に含まれるβ-グルカンなどです。

こうした食物繊維は、種類によって利用する腸内細菌や発酵のされ方が異なります。

特定の食品をたくさん食べるというより、いろいろな食材を日々の食事に取り入れることが大切なのだと思います。

食物繊維は腸内細菌の餌になるだけではない

食物繊維というと、便通を良くするものというイメージが強いかもしれません。

もちろん、それも大切な働きです。

しかし、食物繊維の役割はそれだけではありません。

人間の消化酵素では分解されにくい食物繊維が大腸まで届き、腸内細菌によって発酵されると、短鎖脂肪酸などが作られます。

その短鎖脂肪酸は、腸の細胞のエネルギー源になったり、腸内環境や免疫の働きに関係したりします。

ただし、食物繊維を摂れば必ず同じ量の短鎖脂肪酸が作られるわけではありません。

どのような腸内細菌がいるのか、どんな食事を続けているのかによっても変わります。

また、食物繊維は種類によって性質が違います。水に溶けやすいもの、溶けにくいもの、腸内細菌に発酵されやすいもの、比較的されにくいものがあります。

だからこそ、同じ食材ばかりに偏らず、さまざまな食品を食べることに意味があるのだと思います。

酸素と腸内細菌にも関係があるのだろうか

今回、もう一つ疑問に思ったのが、酸素カプセルと腸内細菌の関係です。

私は普段、1.1気圧の酸素カプセルを使用しています。

酸素といえば、身体の隅々まで届けるものというイメージがありますが、腸内細菌との関係はどうなのでしょうか。

調べてみると、高気圧酸素療法と腸内細菌の関係を調べた研究もありました。

2024年に発表されたクローン病患者を対象とする研究では、高気圧酸素療法を受けたグループで、腸内細菌の構成や多様性に変化が見られました。

ただし、この研究は患者20人を対象とした探索的な研究で、酸素療法を受けたのは10人です。治療条件も2.5気圧絶対圧で100%酸素を吸入するもので、一般的な1.3気圧の酸素カプセルとは大きく異なります。

また、腸内細菌は酸素が少ない環境を好むものが多く、酸素を増やせばすべての菌が元気になるという単純な話ではありません。

酸素環境が腸内細菌にどのような影響を与えるのかは、まだ研究が必要な分野です。

少なくとも、現在のところ、1.1気圧の酸素カプセルが腸内細菌を改善するとは言えません。

ただ、身体の酸素環境と腸内細菌の関係まで研究されていることは、個人的に興味深く感じました。

食事は自分だけのためではない

甘酒を作ることから始まった今回の疑問ですが、調べてみると、発酵と腸内細菌、食物繊維、酸素環境など、いろいろな話につながりました。

麹菌が米に働きかけ、食材を変化させる。

その食品を私たちが食べる。

そして、私たちが消化しきれなかった食物繊維などを、今度は腸内細菌が利用する。

そう考えると、食事というのは人間だけで完結しているものではないのかもしれません。

自分の身体に栄養を届けるだけでなく、お腹の中に暮らしている微生物たちにも食事を届ける。

何か特別な健康食品を探すのではなく、昔ながらの食材や発酵食品を、無理なく日々の食事に取り入れていく。

自分の身体だけでなく、その中に暮らす微生物たちのことも少し考えながら食事をする。

そんな食生活も、面白いのではないでしょうか。